2012年10月31日

『二つの祖国で 日系陸軍情報部』

邦題 『二つの祖国で 日系陸軍情報部』  米題 『MIS (Military Intelligence Service)』
(東京映画祭 TIFF in 日本橋 / ヒューマン・ドキュメンタリー/ 「山路ふみ子賞」の文化功労賞の受賞作品)

http://2012.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=191
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今年も東京映画祭の季節がやってきた。数多くの優良な作品が都内の各映画館で上映され、芸術の秋、文化の秋真っ盛り。そこで、たまには社会性のある作品を鑑賞して、いろいろ感じてみようではないか。そんな作品を観るきっかけを作ってくれるのも映画祭の魅力であろう。

その一つ、『二つの祖国で 日系陸軍情報部』を紹介したい。すずきじゅんいち監督のアメリカ日系人部隊シリーズ第三弾だ。すでに米国にて『MIS (ミリタリーインテリジェンスサービス)』という題で封が切られており、多くの新聞や雑誌がこの映画に関する内容や社会現象の記事にしている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111103-00000016-cnn-int
(日系人部隊出身者に米最高勲章に関する記事だったが、削除)
http://www.us-lighthouse.com/specialla/e-587.html
3月18日付 読売新聞ロサンゼルス支社発記事など・・

そして、「山路ふみ子賞」の文化功労賞を受賞した。社会的反響はかなりのものだ。

その日本版の発表が、去る10月24日、東京国際映画祭の作品として日本橋室町の三井コレドホールにて行われた。すずきじゅんいち監督の挨拶から始まり、ちょっぴり硬くなった雰囲気の中、‘監督の監督’の紹介、つまり、奥様の榊原るみさんの登場。プチ独演会??も添えて会場は和やかになったところで、『二つの祖国で・日系陸軍情報部』が上映された。上映後、監督と、ハーバート・ヤナムラさん(元MIS兵士)が登壇、Q&Aも交えて内容の濃い2時間だった。

ここで、 『二つの祖国で 日系陸軍情報部』 のあらすじを紹介する。



 MISとは、かつて日本とアメリカが戦争状態になっていた時、アメリカに籍をもつ日系人で編成された情報部隊の事である。アメリカに籍を持っているとはいえ、彼らの父母や祖父母は日本から渡ってきた日本人移民である。

 特にMISのメンバーは日本滞在経験があり、また日本語が堪能、つまりこの時点では日本人としてのアメリカ人だった。前作2作で扱われた日系二世とは決定的に違うのは、自分の祖先の祖国・日本という国を知っていることである。彼らは‘帰米’とも呼ばれ、日系二世たちとは違うカテゴリーにに分けられた。

 帰米日系人は、日系二世たちよりもはるかに強い祖国愛のため敵国日本を憎む事ができず、かといって忠誠先はアメリカに向けなければいけない。また、日本にいればアメリカ人、アメリカにいれば日本人としてみられ、外からも内面においても悩みが深かった。その二つの祖国がよりによって交戦状態となり、彼らはもっとも辛い境遇に置かれた。
 
 彼らがアメリカへ忠誠を示すことを証明するには軍隊に入隊する以外、道はなかった。そうした祖国愛と本国への忠誠心という特殊な立場を、アメリカという国家は利用した。

 戦時中、情報戦を軽視していた当時の日本軍は、暗号もずさんで、多くは日本語さえ解れば作戦すら解読されるという有様だった。MIS部隊は、その情報収集任務を任され、山本五十六長官を打ち落とすきっかけを作るなど、その活躍は目覚しかった。また、捕虜となった日本兵を詰問する任務にもあたり、顔カタチが日本人だけでなく、流暢な日本語を話す彼らに、多くの日本兵捕虜は心を開いた。ここでも多くの情報を手に入れるなど、アメリカ軍が対日戦をかなり有利に進める原動力を果たした。

 一方、戦争前に日本に帰国した日系人もいて、彼らの多くは日本軍兵として戦場に狩り出された。太平洋の小さな島で同じ境遇を経たり、場合によっては肉親同士だった日系人たちが同じ戦場で敵味方に分かれて戦っていた事もあった。

 そのような悲劇を経て敗北し、廃墟となった日本。戦後、MISはその後の復興や憲法製作にも携わった他、ソ連への対抗から共産党活動への封じ込めにも活躍し、戦後から続く現代日本の礎を担った。つまり、現代日本の繁栄は彼らの汗も混ざっている事にもなるのだ。

 しかし、彼らがいかにすばらしかったか、いかに優秀だったか、だけに焦点をあてると、この映画を観る上で訴えるものがぼやけてしまうかもしれない。

 彼ら『帰米』や日系二世、三世・・・たちは、明治以前の『日本人性』を思い出させてしまう。明治時代に育った一世がアメリカ本土やハワイに渡り、子供たちを日本の昔ながらのやり方で育てたため、二世や帰米の方は今でも日本人性を持っている。まるで時が止まったように。

 一方、本国の日本人たちは、戦争に負けたことによって、自信を失い、世界観が180度変わった影響も手伝い、あまりにも多くの大和魂が消えてしまった。戦後の日本人は、自ら日本人性を捨てたのであろうか。

 そして、その‘日本人性’とは何であろうか。MIS部隊が捕虜を尋問する時のその こころ、白人と日本人との間にたってコミュニケーションを大事にする配慮、そして日本の叔父に謝意を伝えたかったが果たせなかったその なみだ、いろいろな場面や証言から日本人のこころとは何か、を感じることと思う。

 この映画は、日系人部隊の歴史的事実と心を体験者たちのインタビューと記録映像をまじえてドキュメンタリーとして仕上がっている。しかしその内容は決して重苦しい雰囲気ではなく、明るく、前向きで、そして優しく描かれている。そして功績の誇らしげを強調するものでもない。 まじめな映画を鑑賞する前に、「では楽しんで」と言うと怒られるかもしれないが、映画を観るということは楽しいことだ。何も緊張して神妙になる必要はない。ここであえて言う。

「楽しんで観てください。」

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posted by kazunn2005 at 14:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
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