2011年10月16日

なぎさの中の孤島 (孤島の医者のこと) 与那国島〜

 破格の待遇

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 前回から・・・(与那国町役場で開かれている定例議会の傍聴をした筆者は、診療所の問題で悩む自治体の苦悩と、おかしなお金の存在を知る)

 2番目の議案に移る・・・

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                (総務財政課長)

  Dr.コトー診療所という漫画を知っているだろうか?

 小学館の漫画誌、『週刊ヤングサンデー』に連載されている『Dr.コトー診療所 (山田貴敏 原作)』という漫画がある。
 医療で島住民の信頼を築きながら離島医療の現実を描いたもので、その舞台は、鹿児島県のある離島がモデルだが、まさに今の与那国島の現実も同じ。毎回、島の住民の誰かが重病や大怪我となり、内地の病院に運んでいては間に合わない、という事情で名医が毎回診療所でメスを捌(さば)く、という展開が多い。一方、離島ならではの人間関係、ドロドロした医者の世界などもこの漫画の特徴であり、多くの人に共感を与えている。

 その作品と与那国がどのような関係があるかといえば、これがドラマ化し、フジテレビ系列で不定期の連続ドラマとして放映された。そのロケ地が与那国。今でも、ドラマで出てきた建物などが観光名所として扱われている。
 
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 (ロケ地、ドラマの中では‘診療所’)  

 では、現実の与那国町の診療所はどのような状況なのだろうか。
現在(2011.8月)、歯科医と診療医(1人で内科,神経内科,小児科,外科,整形外科,皮膚科,産婦人科,眼科,耳鼻咽喉科を担当)があり、計2人の医師が常駐している(もう一人は歯科医専門)。

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 (与那国島の本当の診療所)

 つい先日、私が泊まっていた宿で急に産気づいた女性が苦しみだして診療所に運ばれた。しかしそこでは処置できず、ヘリコプターで島外の病院に運ばれた事があった。緊急時には一応、ヘリコプターで緊急搬送する体制は出来ているが、島で子どもが産めないとは悲しいものだ。

 それでも島の人たちにとって唯一の病院、診療所は絶対なくてはならないもの。だから医者に関しては敏感だ。
 
 話は議会に戻る。

 一つ前の議案は、以前成立した条例がお金の面の修正が必要、というものだった。その条例とは、新たな医者探しと運営を社団法人に委託するというもの。お気づきの通り、一連の指定管理者選定はどうもお金の匂いがプンプンしている。もちろん、これを野党系議員も指摘したが、反対ゼロで可決された。

 これでは、今までにない多額の金が際限なく一社団法人に渡ることになる。表向きは医師不足解消という反対の余地がないことを掲げているが、実は、この社団法人に決まったいきさつ、お金等、この島特有の利権が絡まっている、という事を私は後で知ることになった。

 さて、この日の二つ目の議題は、次から来てもらうお医者さんの報酬を、一日8万円、交通費14万7千円、計22万7千円を医師に支払う、というもの。‘一日に’である。月間にしたら約280万円(18.5日間勤務)、島民の平均年収以上となる。
 
 名目上は、毎日東京より通勤する、という形をとるが、実際は毎日島に常駐するので当然交通費はかからないし、東京から通勤するなんて常識では考えられない。しかし、行政側は平然とそれを公言し、突っぱねようとするのだ。

 要は、医者の報酬としてこれ以上上げられないが、交通費という名目で処理しましょう、という事らしい。因みに、今の診療所の医者の報酬よりもずっと多い。

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               (外間〈ほかま〉町長)

 反対派議員からは、

「いくら医師不足といえども、一日22万は高すぎる!ただでさえ財政難なのに、これでは町民の理解は得られない」

と噛みつく。しかし、総務財政課長は、

「医療の空白を生まない為にやもえない」

の一点張りで、交通費が発生していないのに多額の交通費が支払われる点について触れない。

 結局、議長の、

「相手が医者だからなぁ〜」

の一言で雰囲気が変わり、そして一旦休会となった。

 すると、何やら議員と町長が与那国方言で議論をし始めた。どうやら、本当の議論はこの『非公式』なところにあるようで、後で聞いた話では、私がいるために異例の‘与那国語’を使ってわざと解らないようにしたらしい。それだけ、外の者に詳細を知られたら都合が悪いものかもしれない。

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 反対派議員は粘り、上限設定などの案でもって討論まで持ち込もうとしている。
 
 地方議会で言う『討論』とは、議員は、表決の前にどのような理由で賛成・反対するかを明らかにし、他の議員に自らの意見に賛同してもらうよう訴えることだ。それは法律で許されており、全会一致以外において逆に省略されれば違反となる。ある地方の旧態依然とした議会では、討論はよく反対派のパフォーマンスだ、と冷たい視線を向けるところが多く、討論省略のところもあるという。

 私は討論を期待した。討論がないと、いくら質問時に反対意見を述べても結局討論なしの採決で賛成したら、それは実質全会一致と変わらないからだ。
 さらに、討論が一切ない事は議会の存在そのものが問われる。つまり‘死に体’議会であり、行政のカーボン紙的役割にのみ落ちたなら、それは単なる民主主義ごっこに過ぎなからだ。

 しかし期待は無駄だった。

 方言で町長と反対派議員とのやり取りが20分ほど続き、役場の課長達は議場を一時退席してしまう倦怠感が漂う。そして、賛成派議員から、「議長、いい加減に再会!」とまくし立てられ、本会再開。

 結局、反対派は賛成派に説得されたようで、
 
 「委員長報告は終了します。討論はございませんか」
 「なし!」
 「それでは採決に入ります」

 採決では反対ゼロで可決となった。こうして、新たにくる診療所の医者は破格の待遇で迎えられる事になった。因みにこれは‘国や県’からの補助金で支払われる。

 なお、三番目の議題については、島の西の端、久部良漁港の排水溝工事の工期と予算の拡大延長に関する件で、これも反対ゼロで可決され、予定より40分オーバーして、2時間40分で閉会となった。

 自衛隊のことについて何かあるのかな?と思い議会傍聴をしたのだが、思わぬところでいろいろ考える機会をもらった。
 因みに、与那国の財政の9割!が国や県からの補助金であり、それは我々日本国民からの国税から賄われている。決して、『島の事だから関係ない』ではないのだ。

 たった一日だったが島の議会を傍聴していて思ったことがあった。それは、議会が形式化し、これでは行政の暴走を止められないなぁ、という事だ。これは、議会や町長の選挙にすべての癌が集まっている。

 次回は与那国の選挙事情について。

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posted by kazunn2005 at 04:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅行
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