2011年10月14日

なぎさの中の孤島 (傍聴の席) 与那国島〜

 傍聴の席(いす)

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(与那国島位置)

 この島には魔物が潜んでいた。

 その伏魔殿の前に立った。

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 2011(平成23)年8月23日、私は日本最西端の島、与那国島の町議会を傍聴しようと与那国町の町役場を訪ねた。

 よくある本土の豪華な役場とは異なり、かなり年季の入ったコンクリート造りのその舎は、観た目とは違い頑強な城のように感じた。何せ、一介の旅行者が城(役場)にノコノコと現れるものだから、自然と職員の視線が冷たく突き刺さるのも無理はなかった。

 「あのう〜。ここで10時から議会の定例会が開かれる、と聞いたのですが・・・」

一階の総務財政課の札の下で、おばちゃん職員に恐る恐る聞いてみると、

 「テイレイカイ?何の用なの?何?傍聴?それなら、二階の議会事務局に行ってちょうだい!」

と突き放された。
 自分のところの市の議会すら傍聴したこともないのに、何でよそ様の町の議会を傍聴しようとしているのか?正直、自分自身に問い詰めていたが、ここまで来たら引き返しできない。こうして二階へ登ってゆく。

 二階の奥の方にズンズン進んでゆくと、『議会事務局』というセクションを見つける。どうやらここで傍聴の手続きをするらしい。傍聴する事なんて別にたいしたことではないだろう、と思っていたが、意外にそうでもなかった。

 傍聴するには、傍聴簿に名前と住所を書けばいいだけなのだが、その手続きが少し厄介だった。簿が置いてある棚のような机を挟んで正面にドデンと座っている、厳(いかつ)い面構えをしたおっかなそうなおっちゃんが私にいろいろ聞いてくる。

 「傍聴?何で傍聴しようと思ったの?」「誰からこの定例会がある何て聞いたんだ!」「マスコミ関係じゃないよね?」
 
 何だか、傍聴がどうも普通の行いではないことを内々に悟る。このおっちゃんは、島の議会の議長さんであり、保守系に属する前西原武三氏。老眼鏡をずらして‘ギョロ’と鋭い視線を終始向けながら、私が傍聴簿を書き終わるまで無言でいた。

 傍聴簿を開くと・・・誰の名前もなかった。つまり、私は今年一番初めに訪れた傍聴者という事なのか?その点はよくは解らないが、傍聴者が現れる、という事は非日常のことである事はこの瞬間、察しがついた。

 沖縄県八重山郡与那国町。日本最西端の島で有名だが、小笠原諸島の母島よりも南にあり、一番南にある有人島、波照間島に比べて若干北にあるが、日本領土の一番端にある点で最‘南’端の趣すら感じてしまう最果ての島である。

 この島の町議会をなぜ傍聴しょうとしたのか。それは、昨今世間を賑わしている自衛隊問題を議会が議論するのではないか、という‘ちょっとした期待’が入り混じっていた、と告白しなければなるまい。しかし、当日は自衛隊問題は議論の対象ではなかった。

 傍聴簿への記載が終わると、職員より傍聴席へ案内される。すると、長い間使っていなかったのか、部屋鍵の立て付けが悪くてなかなかドアが開かず、さらにやっと開いても、傍聴席の長椅子にけっこう埃が溜まっていて、職員がせっせと雑巾で拭く始末。傍聴席はまるで監獄のように鉄格子で区分され、そしてクーラーも壊れているわで居心地は非常に良くなかった。

 午前10時、定刻通り議会が始まった。まずは、お約束どおり、議長の開会の宣言と、形式的な議事の運営がなされてゆく。

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 議場には、議長と事務局長(副議長格)が一番上の壇上(といってもそれほど高くはない)に座り、右側列に産業振興課長、空港課長、総務財政課長、町づくり課長、そして一番前に町長(外間守吉町長)が座っている(副町長は空席)。

 左列には、後ろから、書記、福祉課長、診療所課長、教育長、出納室長などが座り(1人欠席)、これが行政側の面子。一方、町議の方は、正副議長を除いて4人出席しており、うち2人は反対派(野党)系議員のようだ。つまり、定数6に対して与党(自民党系)系が4人ということだ。

 今宵の議題は3つ。一つは、診療所の指定管理者の問題。

 なんじゃそりゃ?と思ったが、要はこういう事だ。

 今、多くの離島では、診療所のお医者さんが慢性的に不足しており、お医者さん探しはその島にとって相当な負担だという。そこで、今まで町が自ら行っていたお医者さん探しを、とある医療系の社団法人に任せて、診療所の管理・運営もやってもらおう、というもの。
以下がその新聞記事。

 http://www.y-mainichi.co.jp/news/18509/
 【6月14日・八重山毎日新聞より:【与那国】6月定例与那国町議会(前西原武三議長)が13日に開会し、初日は与那国町診療所設置および管理に関する条例など11件を原案通り可決した。14日は11年度一般会計補正予算など補正予算5件を審議する。
 会期は22日までの10日間。一般質問は21、22の両日に予定している。

 町診療所設置・管理条例は、診療所の管理・運営を指定管理者に委託するもの。
 町では、(社)地域医療振興協議会(吉新通康理事長)=東京都千代田区=を指定管理者として、10月1日から町診療所の指定管理を委託する計画。町では同協議会と3、4年前に診療支援協定を結び、月に1回、5日間、医師の派遣を受けている。
 7月に同協議会が町内で議員を中心に説明会を開く予定。それを受け、町では8月までに臨時議会を開き、同協議会を指定管理者とし、10月1日の指定管理を目指す。

 同診療所では、2001年6月から花村泰範医師(49)が常駐し診療業務に当たっているが、10年の節目で退職を申し出ていた。
 町診療所施設の管理運営する指定者に対し、初期運営費用を貸し付ける基金を設立する「町診療所指定管理基金条例」も可決。町では今回、一般会計補正予算で2000万円の積み立てを計上している。
 このほか、比川地区に設置した共同売店の指定管理や利用料金などを定めた「比川地域共同売店の設置および管理に関する条例」も可決した。】


 この件は、今年6月にすでに議会を通過し決まったものであるが、今宵は、一部この件で条例の改正が必要になっていたため、総務財政課が急いで議会に上程した、というものだった。

 しかし、その指定管理者団体を決めるのに、本来は公募であるはずなのに、実質公募ではない、という点を反対派議員から指摘を受ける。要は最初から決まっていた、というものらしい。もともと、東京のこの社団法人には、すでに2,3年前から半委託のように支援協定を結んでいて、実績を積んだ末に指定業者にしよう、としたわけだ。つまり、条例では公募なのに全く公募でではなく、条例と違うではないか!というのだ。

 問題は、担当の総務財政課長の答弁だ。

「条例では、『公募でないものもありうる』とあり違反していない」と答弁。さらに、当初費用より積みあがったため、条例の一部改正が必要となった。

 すったもんだ挙句、反対ゼロで結局可決された。

 何だかいきなり分かりにくい内容だったかもしれないが?・・・それでは次の議案は? これはけっこう単純であるが。

 実は、問題はこの第2番目の議題だった。

 (次回は16日 日曜日ごろ)

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posted by kazunn2005 at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅行
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