2011年10月28日

なぎさの中の孤島 (目覚めた国境の島 ) 与那国島〜

 島を揺るがす自衛隊問題

 今や全国紙をも賑わしている与那国の自衛隊誘致問題。

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 その自衛隊とは陸上自衛隊(陸自)のことだ。離島の情報部隊に海上でも航空でもない、陸上の部隊を置こうとしている。その背景にある国側の事情とはよく解らないが、島側の事情はそれほど不明ではない。それは、島が生きるか死ぬ(無人島)かの瀬戸際に追いやられた末のものであることは簡単に想像できる。

 内地の尺度では、国境の島なのだから自衛隊がいて当然、という概念が大きいが、島の人にとっては、その国境防衛の意識は薄く、自分たちの島の将来感に即つながる意識で考える。

 2010年、与那国の北方約150キロの尖閣列島で、日本の海上保安庁が中国大陸の漁船に攻撃衝突され、両国で大騒ぎとなった。この地域の漁民は、漁場を中国・台湾の漁船のやりたい放題に長年頭を抱えてきたが、こうした年々エスカレートする中国側の実力行使はついに日本当局の危機感を決定的にし目覚めさせた。ただ、大陸側に海域を侵しているという感覚はなく、向こうも人民の好戦的な世相におされ、国家のメンツも手伝って事は長期化の様相である。ただ、国境防備の話が持ち上がったのはこれがきっかけではない。

 与那国島では、2005年に長く就いてこられた町長が死去し今の町長が当選した。現在の町長は福山海運という、与那国島に人や物資を運んでいる船会社の実質オーナーで、自民党系の人だ。当初は台湾との交流に力を入れていて、例えば、台湾投資ファンドによって島の西部にゴルフ場やリゾートホテルなどのレジャー施設『台湾国際村』(仮称)を計十数億円規模で整備を計画するなど、やり方がいかにも‘自民党的’だった。

 しかし、霞ヶ関の壁は厚く万策つきると、一転、自衛隊誘致に舵をきった。2009年8月、二期目を狙う現職の町長は、誘致推進の立場だが自衛隊問題という争点をぼかしながら選挙戦に望み、直前になり立候補した野党系(民主党などが支援)の候補を破り再選した。

 よくある離島の構図は、土建屋さんが支持する議員が議会を占め、土建屋さんたちが支持する町長や村長が当選し、いかに国や県から公共事業予算をもってくるかが評価のすべてであるが、与那国島はそれにプラスして、防衛協会という組織が後ろ盾にいる。

 町長が自衛隊誘致を表明して以来、中央から大臣や政権党の幹部が島を訪れるようになった。国としても与那国に自衛隊を置きたいという方針だろう。陸自は、沖縄本島の旅団を再編成して1800人規模から2100人規模の第15旅団にするという計画がある。旅団長は那覇防衛局内にあり、旅団の上は師団で、師団は九州福岡にある。 そして、与那国にレーダー設備を完備した監視任務の部隊を置きたいらしい。

 二期目の選挙の直前、当時の防衛大臣が与那国を訪問した時、町長はマスコミの前で堂々と「日ごろ、国防上の不安はない。自衛隊誘致の目的は経済的な理由だ」と言いのけ、防衛ではなく島の経済のために誘致する事を否定しなかった。一方、長く台湾交流を支持してきた人たちを落胆させた。

 2009年7月9日 琉球新報より:
 『中国意識「国防」明確に 防衛相 与那国初訪問』

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-146887-storytopic-25.html

 『歴代防衛相として初めて与那国町を訪れ、外間守吉町長(左)と会談する浜田靖一防衛相(右)=8日、同町役場

 浜田靖一防衛相が8日、歴代防衛相として初めて与那国島を訪れた。与那国島を含む県内離島への自衛隊配備を念頭にした訪問だ。浜田氏は、6月末に与那国町長らの自衛隊誘致の要請を受ける以前から、日本の最西端である与那国に関心を示し訪問を希望しており、今回の訪問は、浜田氏の強い意向を反映したものだった。
 今回の訪問について防衛省首脳は「(犬などが自らの縄張りを示す)マーキングのようなもの。(国土防衛の)意思を示すことは重要だ」と話し、尖閣諸島の領有権問題や東シナ海での資源争いなどで対峙(たいじ)する中国を意識したものだと説明する。台湾からわずか111キロしか離れていない国境の島に、わが国の国防最高幹部が降り立つことに、台湾など近隣諸国の反発も懸念されたが、同省首脳は「台湾を意識しているのではない」と述べ、視線の先には中国があることを暗ににおわせた。

■進む南西防衛強化
 国は2004年に策定した現在の防衛大綱(05〜09年)で、島嶼(とうしょ)防衛の重要性を初めて明記した。09年度中には、那覇の陸上自衛隊第1混成団(定員1800人)を300人増員し「旅団」へ格上げするなど、南西地域での防衛体制の強化を着々と進める。
 浜田氏は8日、与那国島への自衛隊配備を要請した外間守吉町長との面談後、自衛隊配備の有無は明言しなかったものの、与那国空港が有する滑走路などに関心を示し、自衛隊配置へ前向きな姿勢を示した。
 さらに、今回の与那国視察には陸上自衛隊幹部の陸上幕僚監部防衛部長が同行した。陸上自衛隊の現場幹部の同行に省内では「珍しいこと」との声があり、陸自の配備に向けた着実な一歩との見方がある。

■異なる思惑
 防衛の観点から、先島防衛の重要性を訴える国に対し、地元の思惑は異なる。
 「日ごろ、国防上の不安はない。自衛隊誘致の目的は経済的な理由だ」。7日、外間町長は断言した。100人規模の駐屯地を誘致することで、人口増や税収増、インフラ整備を期待する。与那国防衛協会副会長の糸数健一町議も「自衛隊誘致は人口減に底を打たせるための小さな起爆剤であって、基地だけに依存するつもりもない」と説明する。
 一方で、「これまで進めてきた国境交流はなんだったのか」と嘆く町民もいる。与那国町は、台湾・花蓮市との交流に自立の道を見いだし、07年には全国の自治体で初めて台湾に事務所を設置した。「与那国島への自衛隊誘致に反対する住民の会」の新崎長吉共同代表は「片方ではお付き合い、片方では基地は成り立たない」と危機感を募らせる。町内の30代男性は「町長自ら『自立ビジョン』の失策を認めたことになるのでは」と疑問を投げ掛ける。(深沢友紀、仲井間郁江)』
・・・以上が新聞報道
 
 つまりこういう図式だ。

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  台湾資本頼み→失敗→自衛隊頼み→土建産業の活性化・・・賛成派

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 台湾との細々とした交流→結果が出ない→自衛隊が来たら標的にされる・・・反対派
 
 自衛隊に関してはここで誘致反対・賛成を述べるつもりはないが、一応頭に入れておきたいのは、対馬の例にあるとおり、自衛隊が駐屯する事によって隣国の観光客が敬遠する理由とはならない事。

 しかし、事実や計算よりも感情のほうが先に走ることは致し方ないこと。例として、沖縄のマスコミは概して自衛隊反対、つまり左寄りの姿勢一辺倒であることを気にしたい。教科書に少しでも彼らの意にそぐわない内容があれば大々的なキャンペーンを張るほど、事態は内地で想像する以上にすごい。よって、いくら土建屋さん万歳の与那国でも反対派の勢力もそれなりにいて、反対・賛成で島は二分されている。

 これは、そのまま議会の勢力図に現れている。直近2010(平成22)年の議会選挙ではこの問題が大きく影響し、買収選挙吹き荒れる中でも、反対派系議員がトップ当選した。これは、島民の中で今の保守勢力への反感と、自衛隊の誘致に強烈な拒否反応を起こしている人が無視できないほど存在することがわかる。

 島の人は概ねよそ者に対しては親切だが、反対派の方々のほうが外(よそ)からの人に対して政治的な意見を堂々と言う傾向があるように思えた。それはまるで援軍に加わって欲しいかのように。その反対派の人たちの言い分は、

 「せっかく台湾との交流を深めているところなのに、自衛隊なんか来たら向こうが警戒してすべてご破算になる」
 「真っ先に与那国が標的になる」
 「その裏に隠されている石垣島への部隊配置を目論んでいる」
 「琉球列島は軍事戦略の要塞化となる」
 「どんなことでも戦争は反対」

という内容であった。

 一方、賛成派のほうは、

 「じゃあ、このまま与那国は無人島になれというのか」
 「島に駐在している二人の警察官の持つ拳銃2丁のみで食い止めろ、というのか」
 「現に中国(中共)が島を脅かしているではないか。戦争はいけない、と言っていても、相手が攻撃し、妻子が殺される運命になっても黙って従え、というのか」
 「チベットやウイグルのようになれ、というのか」

と、反対・賛成派も島の将来と共に国家的視点から考えている人もいる。

 因みに、最近になって中国の観測船や調査船、さらには怪しい船が島近辺に頻繁に現れ、海底探査やら測量らしき行為を行っているのが度々目撃されている。 何もない島なのに、体格が良い男二人連れの、それも目つきが鋭い中国人が島に来訪してきて 写真を取り捲(まく)る姿など。

 小さな島なので、そうした事件はすぐにうわさになり、これらを聞いた島民は中国大陸の恐ろしい靴の音を意識しない訳にはいかず、今、国境の島はリアルに脅威を感じている。

 もっとも、執政者が考えている最重要事項は、島の経済・国家の防衛よりもスケールははるかに小さい。一番欲しいものはもちろん、自衛隊の『票』だ。わずか8票差で議員の当落の運命が分かれてしまうこの島に、自衛隊員約200人とその家族が与那国に移り住んだらどうなるか。それは必ずやダメ押し的に賛成派・保守派の地盤になる事は確実で、反対派はおろか、土建屋に関係のない一般の人たちの票など屁でもなくなる。それが一番の恐怖であるため、反対派は絶対に認めることは出来ないのである。

 隣国が目の前にあるから監視の軍隊を置く。それは特段怪しいことではないはずだが、軍隊を置いたら隣国から標的にされる、隣国との交流が閉ざされる、よそ者に支配される、だけど島に産業がほしい、など、国境を巡る島の人々の感情が大きく揺れ動いている。

 島の中での騒動をみてみると、一連のことは与那国という小さな島だけの視点にしかすぎず、台湾への理解はいっさい感じない。しかし、八重山諸島という視点で観てみると、やはり台湾とのつながりを意識しなければいけないだろう。そうした台湾文化がじつは八重山地方でも息づいている。

 次回は最後に八重山と台湾のお話をして締めたい。

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posted by kazunn2005 at 15:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅行