2011年10月11日

なぎさの中の孤島

 辺境のなぎさの島

 
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 眩しすぎる直射光線が甲板へ容赦なく照り焼いている。この熱線はじつにすばらしく強烈だ。

 フェリーは先ほど石垣島の港を出、穏やか過ぎる青潮の中をドンブラ鼓〜と波のリズムに合わせ這うように淡々と航海をこなしている。2011(平成23)年8月、私は日本最西端の島、与那国に向けて黒潮の流れに逆らっていた。

 石垣を出ておよそ4時間が過ぎたころ、水平線が少し途切れ、そこをさすように小さな島が観えてきた。

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 そう、あれが与那国島だ。石垣から127キロ、石垣と台湾の中間あたりに位置する黒潮本流の流れに立ち向かう周囲約27キロの小さな島は、切り絶った断崖絶壁の岩陰が周囲を覆い、訪れる者をそう簡単に寄せ付けない素振りを早速披露していた。

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 「うッホホーイ!〜、ヨナグニきたよ〜ん、与那国島ぁ〜」

 つい弾けてしまった私にとってあそこは単なる離島ではない。今までいろいろな島を巡ってきが、今、一つの日本の辺境を訪れようとしている。異国に一番近い沖縄の果ての島、最もお金がかかり時間もかかるこのはるかな島に以前から絶対に行ってみたいと思っていた。長い間それを描いていたがなかなか実現できないでいたが、それが今、ようやく実現しようとしている。

 同じ国境の島でも長崎県の対馬がそれほど最果て感がないのはなぜだろうか。それは、その先の『隣国へ渡れる』ということ、つまり、その交通路が控えている事実が大きい。
 
 
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(対馬からの対韓国行き旅客船・対馬にて〔2011年8月〕)

 こちらは、隣国(台湾)との定期交通路がないどん詰まり状態なので、日本人からしてみれば最果感はひとしおだろう。

 その台湾だが、条件さえ整えば島の西側から台湾の山影が堂々と観える、と誰かから聞いている。しかし、今日はその影は全く映えていない。その条件というのがいろいろあり、晴れていても海上が澄んだ空気の状態、水蒸気がない、台湾側が雲の通り道ではない、などいろいろかみ合わないと観えないらしい。因みに、与那国と台湾との間には黒潮の本流が流れ、拝める確率は年に数日程度だという。

 因みに、早朝の時間帯のほうが観えるらしいが、与那国の位置は北緯24度28分6秒、東経123度0分17秒。この東経123度というのは、上海が121度なので時間軸からみればもう中国沿岸のゾーンに浮かんでおり、実際、朝明るくなるのは日本本土より1時間ほど遅い。一方、日没が8月下旬で19時を過ぎる。

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 (与那国の位置)

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 与那国上陸


 午後3時ころ、港が観えてくる。地図によると、島の中心となる集落、祖納(そない)に港があるようだが、船はなぜかそこには入らず、わざわざ、さらに5キロ西にある久部良という漁港に入港する。一気に日本最西端の島のさらに一番西に到達したわけだ。

 
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   (一番西の久部良港へ)

 久部良の港は、絵に描いたような超壁崖の岬、西(いり)崎が目の前にそびえていて、天然のガードを固めている。

 
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  (西崎の真横にある久部良の港)

 船が港に着桟すると、20人ほどの旅客がち切れそうなつたないタラップをトロトロ降りてゆくが、数分で全員下船、舟客は実に少ない。

 
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  (与那国上陸)

 一週間に2便(与那国着は火曜と金曜、発はその翌日)程度で片道3,460円(往復割引もある)。飛行機(所要30分)の三分の一(飛行機往復割引ならその半分)程度の運賃で与那国へ着けるが、空港がある島にとって船便の重要さは薄れてしまう。

 さて、港ではこれから世話になる宿のおじぃーが出迎えに来てくれていて、すでに石垣の港で予約の電話をしてあるので何もかもスムーズに事が進んだ。さあ、これから13日間の与那国の島物語が始まる。

 
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    (おじぃー)

 おじぃーの軽トラに乗り、島の中心部へ向けて久部良集落を出る。

 
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   (日本最西端の久部良の郵便局(分室))
 
 
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 サトウキビ畑の中をコロコロと走り始めると、早速見えてきたのが『自衛隊誘致を』『自衛隊反対』の横断幕。いきなり政治色バリバリの厳つい雰囲気が訪問者のほっぺたとつねる。
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   (反対・賛成の横断幕が訪問客を早速歓迎)

 それは観なかった事にして、軽トラはポコンポコン鳴きながら島の中心集落に向けて苦走する。10分もすると、祖納地区のスーパーマーケットが現れ、宿はその隣にあった。
 レンタルバイクは一日500円の超格安で、ウェットスーツもいろいろ遊び道具もそろい、もちろんインターネットも完備しており、観光宿としては申し分ない。それでいて一泊2000円なのだから感激である。料理は基本的に出ないが、隣のスーパーから材料を買ってくれば勝手に自炊して過ごせるのでコストは最小限に抑えられる。さらに、白いご飯は宿の奥さんから提供してもらえるというおまけつき。

 私は早速この島が好きになった。

 
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   (潜伏した宿)

 ☆ ヨナグニという島

 
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 祖納の集落にはスーパーが2軒あり、どちらも似たようなも店。離島なので、おおよそ物資はすぐ腐る物以外は船便で持ってくる。そのため、その分の輸送料がドカンと上乗せされ物価がめちゃくちゃ高いのだ。
 例えば、キャベツ一個450円、ねぎが二本(それも新鮮ではない)350円、カップラーメンが220円、1リットル牛乳など500円近くするのだが、不思議とビールはそれほど変わらない。よって、与那国に来るときは、あらかじめ石垣などで食料を仕入れてくることをお勧めする。

 さて、早速祖納の集落を歩いてみよう。ここは歩いて回れるほどコンパクトサイズで、路地向かいの家々がどこも頑丈なコンクリート造りだ。
 
 
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   (祖納集落)

 中には美しい琉球造りの赤い瓦屋根を被った昔ながらの実家が軒を構え、琉球石灰岩を野積みした石垣が映え、いかにも沖縄らしい風景がここにも伸びる。

 
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  (文化財に指定されている旅館)

 また、とある軒で島の酒である泡盛を作っている倉庫も見つけ、そこから醗酵したお酒の匂いが流れては、ほのかにやられそうな事態も待っている。
 
 私はここに来るまで知らなかったのだが、沖縄では、軒の突き当りでは悪魔がここで途切れるように『石敢當(いしがんとぅ)』と書かれた魔よけの表札を付ける習慣があるのだが、これは、T字路が多い与那国の集落にとても多く貼られている。
 話によると、市中を徘徊する魔物「マジムン」は、勢いよく直進する性質を持つため、T字路や三叉路などの突き当たりにぶつかると向かいの家に入ってきてしまうと信じられ、そこで、その魔物が当たると砕け散るとされる『石敢當』を突き当たりに貼る、との事。沖縄には日本本土にはあまりない文化があるのでまた楽しい(鹿児島県や中国、東南アジアにも点在するらしい)。

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   (石敢當) 

http://4travel.jp/domestic/area/okinawa/okinawa/kumejima/yonagunijima/travelogue/10582312/

 また、観せものではないが、この島の墓地は壮厳壮麗で美しく、また眺めの良い海岸ぺたに鎮まっており、ご先祖様を大事にしている感じが伝わってくる。

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   (祖納集落のはずれにある墓地)

 ☆ 与那国の観光資源を簡単に紹介しよう。

 
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 ‘与那国馬’

 与那国町の天然記念物の馬。

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 昔から飼育されてきた在来種の農耕馬で、体高はおよそ110-120cmとポニーに分類されるほど比較的小さく、乗馬するにはやさしい馬。まるでロバみたいだ。
 古くから農作業で共に汗をかいた馬だったが、農業が機械化されたのと、その農業自体が衰退されたため、今では観光用として細々と保存活動が行われている。
 一時期は59頭まで減ったらしいが、今では保存活動のおかげで復活してきており、オスよりもメスが重宝される。オスはペット用8歳程度で、7万円くらい、とのこと。また、観光客を見ると馬は、「また乗せるのか」と悟り逃げようとする。

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 ‘西崎’

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 Vいりざき′と読む。北緯24度26分58秒東経122度56分01秒、ほとんど上海程度の位置にある。もちろん日本国最西端。
 東西南北・日本の最果てシリーズの中でただ一つここだけが、一般の交通手段で誰でも自由に訪れることができる‘名実’一致したサイハテ地点。
 運が良ければ台湾山脈が眺められ、私は岬に通うこと3日目の早朝でやっと台湾と出会うことが出来た。

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 (西崎から観えた台湾山脈)

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 (日本領内最後の西陽、山から西崎を手前に台湾方面を俯瞰)

 また、ここでの本邦最後の夕陽は、晴れていればバンバン余裕で観られる。

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 (本邦最後の沈む夕陽)

 ‘海底遺跡 ’

 1986年にダイバーによって発見され、まるで人工的に切り出しされた岩が海底の奥深くに眠っていることから、世界最古の海底遺跡か、と騒いでいる。
 一応、沖縄県内の大学のおえらい様からは、「人が造ったものかどうか認定できない」という理由で、遺跡というスタンスは正式には認められていないらしい。しかし、もぐった者がパッと観、「すげー」「これ絶対古代遺跡だよ」と思うほど見事なものだそう。
 因みに、運がよければシュノーケルで上から観られるらしいが、事実上、ダイビング連中の独り占め 状態。私は結局予算と海流の関係上、もぐる事も観ることも出来なかったが・・・。

 ほかにも、陶器焼き物、
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 泡盛醸造、
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 ドラマ・Dr コトーのロケ地
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 その他に、与那国方言、かじき(マグロではない)、世界最大の蛾・ヨナグニサン、立神岩、
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さとうきび、長命草などが見所・名物。因みに、どなん(泡盛)はこの島の名物の酒だが、材料はタイのお米を使用している。

 しかし、この島を感じるには観光名所や名物ではない、それ以上のものを観るべきかもしれない。そして、この島特有のワールドを知らない事には与那国は語れない。

 次回はこの辺から本題に入る。(次回は二日後)

 
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posted by kazunn2005 at 20:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅行